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DIALOGUE

MARUSUE BUTSUDAN

これから先の技術の伝承については、どのようなビジョンを持っていらっしゃいますか。

そうだな。腕がいいっていうのって、いろんな意味があると思うんですけど、うちの企業理念は「技術とコミュニケーションで最適解を見つける」なんです。だから、独りよがりじゃない技術っていうんですかね。同じ漆塗りと言っても、仏壇と山車と文化財では違うニーズがあるわけじゃないですか。そういうのを忘れないようにするのって、意外と難しくて、職人って、なんか頑固になっちゃうんですよ。うちの場合は幸いなんかいろんなものを塗るので、柔軟性が培われてると思うんですけど、そういう柔軟な技術を伝えたいですね。

若い職人さんは、増えていますか。

名古屋仏壇の職人って限定するといないですね。20代は弟が1人で、30代は僕だけです。

伝統工芸の問題は人を雇う余裕がない会社が多いので、なかなか求人もない。でも、うちもちょっと最近忙しくなってきたので、勇気を出して募集してみようかなと思っているんです。うちでは、会社の問題定義として、仏壇業界が先細りしているっていう課題が5年前くらいに上がって、それで、漆塗りの技術はそのまま活かして、マーケットをずらしていこうということにしました。仏壇にこだわりすぎると、仏壇の需要が減ったら仕事が減ってしまうので、文化財の修復の技術を学んで文化財修復の方に進出したり、お祭りの山車の修復も手がけています。

この時代に手でものを作ることはマルスエ仏壇さんにとって、もしくは伊藤さん個人にとって、どのような意味があると思いますか。

やっぱり手作りのものには、面白いとか、使うとテンション上がるとか、精神的な満足感があるんじゃないかな。機械が作った方が安いし、品質も揃うと思うんですけど、合理化しすぎるとつまらなくなるっていう部分があると思います。

僕が生まれた頃には、まだSDGsとか、エコっていう概念はあまりなかった。手作りって、高価だし、時間がかかるし、そういう時代にはあまり評価してもらえなかった。だけど、今ちょっと風向きが変わったなって感じます。例えば、仏壇は使い捨てじゃなくて、修復してまた使える。そういう機能が元々あるというところが面白さじゃないですかね。評価基準の問題ですが、役に立つのは機械の方が早いし、安いです。でも、それが面白いかとか、幸せかっていう事になると別ですよね。出来上がったものから手仕事の良さが伝わるっていう風に思います。

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