← Back to DIALOGUE List

DIALOGUE

TAKEDA KAHEI SHOTEN

有松・鳴海絞の特徴的な点として「絞り」と「染め」の二つの技術が1枚の布の上に掛け合わされていることがあると思います。有松・鳴海絞りには100通り以上の絞りの柄が存在するということですが、全ての職人さんが100通りの柄を絞る技術を持っているわけではないですよね、先ほど「一人一芸」とおっしゃっていたように、柄によっては、この職人さんにしかできないというものがたくさんあって、今では再現できない柄というのもありますか?

はい。江戸時代の最盛期は150種類くらいの柄がありました。でも今はせいぜい20~30種類じゃないかな。職人さんが高齢化していることもあり、年々減ってきています。伝承については、今はなくさないように育成に力を入れています。

組合が、年間10数人を指導しているんです。習うのは5年です。うちの会長が指揮をとってやってるんですけど、もう30人ぐらい卒業しているんです。会長曰く、70人ぐらい育てたいっていうので、育成はしてるんですけど、それが実際仕事につながるかどうはこれからです。そのためには需要を作らないといけなくて、職人を育てたはいいが仕事が出せないっていうのは一番最悪なことです。だから、常に仕事を出し続けないといけません。でも、まだ彼らには着物の素材まではやってもらってないんです。

そうなんですね。着物の生地を絞るのは難しいということでしょうか。

難しいと思う。生地が長いじゃないですか。浴衣の方は、ちょっと綺麗にできる人が出てきたので、次は着物の生地を渡してお願いしなければとは思ってるんですよ。でもね、生地の強度が全く違うんです。硬い紬地なんかは、難しいから失敗する確率が高い。それでも生地を出してやらせないと次に繋がらないので、今、そういうように、育成の方はしっかりシステムを作って、指導をしていくっていう感覚ではやってるんですね。

職人の育成には相当なコストがかかりますよね。

そうですね。それなりにコストはかかります。だからそれだけ価値に反映する必要がある。伝統産業の産地はどこも同じ問題を抱えていると思いますけど、やっぱり職人さんが食べれないと、どれだけ育てても…っていうところがあって。僕らは職人さんの工賃を上げる努力をしないといけない。ということは、最終的な上代にも反映されてくるけれども、どうやって高く売ろうかっていうことを、今は考えています。

昔はどれだけコストを下げて安価で流通できるかっていうことを考えて、それで海外に仕事を出してあんまりうまくいかなくなっちゃったわけです。そうじゃなくてやっぱり、もっと手仕事の価値観を上げていきたいです。生産量も限られてるし、職人さんたちも潤わないと、それで生活ができなければどんどん減っていくわけです。

やりたいという希望者はたくさんいるんですよ。希望して来るんだけど、結局仕事の量がない。若い人がやりたいってくるんだけど、若い人は子育てとかにもお金かかるから続けられないと、生活できない。でもそのレベルまで引き上げてあげないとだめですね。

そういった若手の育成や価値の創造というのは、有松の街全体で取り組んでいるのでしょうか。

そういう、理想みたいなものは、地域でも共有されてたりするんです。一応皆さん、そうは思ってるんですけど、やっぱりうちには期待してるところあるんだな。僕は会長とよく「うちはやっぱり先頭に立って何でもやっていかないと」という話をしています。というのは、今、有松はそれぞれの色が出てきて楽しい街にはなっているんだけど、元々ここがトップとして君臨してたわけだから、もう1回、昔のように、うちが中心にっていうことを町全体で、しっかりそういうシステムを作りましょうよっていう提案をしてます。だからうちがリスクを取ってそうしていかないとダメじゃないのっていう働きかけはしてます。個人的には、自分も絞りをやろうかなとか。社長も絞りをやりなさいよって僕は言っているんです。今まで、竹田家の中で実際絞りをやった人はいないから、面白いじゃないですか。竹田の家が自分で絞るというのは話題性もあるし。そういう働きかけをしています。

今、社員さんは何人ぐらいいらっしゃるんですか。

総勢で言えば15名くらいかな。若い人はいないです。40代が若いのかな。新規採用とかもしたいんだけどね。今、それを会長に一生懸命言ってるんですよ。資金のバランスもあったりして難しいけど、やっぱり人材って大切だから、新しいことをどんどんやっていきたいから、、そのためには数年以内に新しい人も入れてかないといけないしね。
僕でも、もうどっちかって言うと、古い方に入っちゃってるから、もう27年勤めていますから。それこそ20代、30代の若い人たちを入れて、もっと可能性を広げたいなと思うんです。絞りって、二次加工だから可能性は無限大で、何でもできるわけです。だから、新しい、柔らかい頭と技術でもっと発展できるのかなっていう。そういうのをちょっと期待していますね。

竹田嘉兵衛商店さんの400年の歴史の中で、一度も製造を内製化したことはなかったんですか。

ないです。400年、竹田嘉兵衛商店は常に職人さんに仕事を出し続けるっていうのをしてきたんです。竹田嘉兵衛商店という一企業では考えていないんですよ、町全体で考えてる。うちだけで独占して、全部整えてやれば、それはそれなりに儲かると思う。だけど、町全体が共同体として積み上げてきた400年の歴史を大切にしたいんです。

1 2 3 4