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DIALOGUE

ANDO SHOTEN

今回のプロジェクトを通して新たなプロダクトを製作することは、安藤商店さんにとってどのような意味がありますか? 

雪洞というのは、ひな人形の中では部品のひとつであり、脇役なのです。しかし、雪洞の伝統工芸の技術は弊社ならではの強みです。その技術を将来の職人たちや自分たちの会社のためにつなげていくには、何か新しいことをしなければならないと思っています。今は雪洞を飾らないひな人形もあり、そもそもひな人形自体の需要も減ってきています。この技術を守るためにも新たな市場開拓が絶対必要だと感じています。 

今回のプロジェクトを通じ、雪洞が脇役から主役になれるチャレンジをする機会をいただけたことに感謝しています。 

デザイナーとのコラボレーションの中で、新しい技術や新たな視点の変化はありましたか? 

デザイナーの平林さんにプロダクトを提案していただいたのですが、スツールとフラワーベースという提案には驚きましたね。私たちは灯りの業界で、そればかりに執着していましたから。ホヤの部分だけだとか、一部の台座だけを切り取るという発想には感心しました。 

ヨーロッパの市場のことは現時点では勉強不足のことばかりです。まずはこのプロジェクトを通じて挑戦したいと思います。 

今回のプロダクトを作る技術について教えてください。ご苦労はありましたか? 

今回は和紙を張ったり、絵付けしたりするのではなく、曲げ木の技術を活用したフラワーベースを作るのですが、自分たちにとっては大きなチャレンジでした。まず直径40cmという大きさ、かつ骨の本数が通常の3倍ほどあるので、曲げ木の部分から工夫しながら作っていきました。熱を与えた木を曲げていき、溝にはめ込んで固定させるのですが 、それを均等にやるのが職人の技。本数が多いのといつも作っている雪洞より細いので、何回も試作しましてようやく理想に近い形にはなったかなとは思います。 

スツールに関しては、雪洞の下材をろくろで滑らかに削る技術を使っています。初めは重みに耐えきれず歪んだのですが、脚を木にしたり鉄製ならこういう形にしようか…と何回も試作を繰り返しました。スツールの材料は雪洞でも使っている和ブナを使用しました。非常に削りやすくて木目もキレイに出せました。 

フラワーベースはどんな素材を使っているのですか? 

ヒノキを使っています。柔らかくて木目もキレイだし、匂いもいいので使いやすいですが、実は雪洞にはあまり使わない素材なのです。雪洞は塗り物ですので、他の木材でも可能です。あまり使ったことのない素材に挑戦したというのも、今回のフラワーベースの特徴ですね。あとは「できるだけ白木を使いたい」というデザイナーさんの意向もあり、素材を活かした作りになっています。 

最初のアイデア出しからどれくらいの期間で完成されたのですか? 

半年ほどかかっています。小さい部品から試作を重ね、完成品に近い試作はスツールとフラワーベースで各々4回ほど作りました。 

普段だったら新しい商品づくりは伝統工芸士である熟練の職人にお願いしていますが、今回は「新たな職人に夢を持ってほしい」ということで、30~40代の若手の職人と作り上げていきました。「一緒に作り上げていきましょう」と、初めて大きなものにチャレンジしてもらい、いい経験になったのではないかと思います。熟練の職人による指導や、雪洞の唯一の伝統工芸士である弊社社長のアドバイスを受けながら進めていきました。 

これから先の技術の伝承について、どんなビジョンを持っていますか? 

雪洞を次の世代に残していくためにも 、技術技法を守りながらその時代やニーズに合わせた商品を作っていきたいですね。まあ、挑戦1回目で大成功するってことはないでしょうから、止まらず挑戦し続けるってことが大事なんじゃないかな。私どもはどうしても伝統的な文化に寄り添った商品が多いのですが、日常にも使える実用的な商品や雪洞が主役となる商品を作っていくということが大事だと思います。 

機械化が進んでいる世の中であえて手でものを作ることは、安藤商店さんにとって、どんな価値がありますか? 

100年前の雪洞でも修理ができるというのが私どもの強み。手で作られた昔のものを再生させる技術があるからこそ、今まで伝統を守ることができたという自負があります。その技術を生かしながら、他社では作れない商品、ハンドメイドの雪洞を作り続けていきたいなと思っています。 

例えば、雪洞の型となる木枠と木枠の間。木枠も手作業で作るので、ほんのわずかですが間が変わってしまいます。それにあわせて紙を裁断して和紙を張っていくことが必要になりますが、それはやはり機械ではできない。伝統工芸の雪洞は手作業でしかできないことも強みだと思っています。 

長い時間かけて作られたものを、どういう方に使ってもらいたいと思いますか? 

私どもは日本の伝統文化に寄り添って商品を作り続けてきました。その技術・技法を大事にしていきたいという大前提はあります。その中で、今回挑戦した商品は日常的に使えるシンプルなものになっていると思います。ドイツでは祖父の時代から受け継いだ家具を修理しながら長年使われているという話も聞いたことあります。「長く愛されて使い続けてもらえる。  修理しながらも、孫に受け継いでもらえるような日常品」になってくれたら嬉しいですね。 

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