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DIALOGUE

IWATA SANBOU

今回の素材は無垢のヒノキを使用されているんですよね? 

尾張周辺で採れるヒノキを使用しています。材木屋さんに、木目を揃えたいから3枚が1セットになるような木材から切り出してほしいと依頼しました。一枚板ならではの木目の美しさを見てもらえるとうれしいですね。 

白木の商材は、カンナ仕上げで艶を出すため、ペーパー仕上げができません。ペーパー仕上げでは表面がザラザラしますが、カンナだとツルッとした仕上がりになる。水分をポンッと落とすと表面張力で玉になるのがカンナ仕上げ。ペーパー仕上げだと水を落とすとそのままシュンと木目の中に入ってしまう。つまり、カンナで仕上げることで、白木でも汚れがつきにくくなるんですよ。硬く絞ったタオルで拭くと、ヒノキの香りが部屋中に立ち込めるというのも特徴ですね。ヒノキは英語でcypress(サイプレス)というんですけど、hinokiという表記で海外でも伝わるぐらい認知度が高く、アロマオイルも人気なんですよ。 

時間が経過してもお手入れすれば、香りが持続するというのはいいですね。 

お寺はいつまで経ってもヒノキの香りがします。あれは表面を乾拭きや水拭きして磨いているからなんですよ。普段から丁寧にお手入れをすることで、100年以上使えるようなアイテムになります。 

三方作りから始まり、現在は海外向けに生活に密着するプロダクトに取り組まれていますが、今後も世界に向けて発信していきたいと考えていますか? 

そうですね。日本に留まることなく、フランスを中心としたいろんな国の人に知ってもらいたいと思っています。「日本にはまだまだいいものが眠っているんだぞ」と知ってもらえるように。僕たちがやっているのは日本文化の中で育まれた商材なので、そのルーツも知ってもらえると、日本の魅力もより伝わると思っています。 

機械化が進む中、手仕事でものを作ることはどんな意味がありますか? 

うちも一部機械を入れていますが、最後は手仕上げ。機械ではできないことがあるんです。例えば、気候や湿度で木の状態が変化するのですが、職人はそれを見極めて微調整することで一級品のものを超一級品にできる。工芸品は職人さんの感性で磨かれたものだし、ほんの少しのサイズ調整やチョイスする木目、100分の1mm削るためにカンナをあてるか、あてないかで仕上がりが変わるのです。少し赤い木があったらどういう風に加工したらよく見えるのか、考えながら作るというのは職人の技と言えるんじゃないかな。均一じゃないものを作り出せるというのが、手仕事のよさだと思いますね。 

自然と対話しているという感じですかね。 

僕たちは木目を読みながら加工しているんで、この木はこういう加工をして欲しいんだろうなというのが、木を触ることで少しずつ分かるようになってくるんです。「この木の硬さならこの加工に向いているから、あれに使うといいな」というのを見極めていく。ただただその一枚の板を機械に流して、同じ幅に落とすという単純な作業ではなく、細かいところまで行き届くのが手仕事なんじゃないかな。その木の個性を生かして、一番輝けるように手を加えられるのが手仕事の最大の利点だと思います。 

手塩にかけて磨き上げたものを、どんな方に使ってもらいたいと思いますか? 

木製品は手のかかる子どもみたいな感じだと思うんですよ。大切に愛でてくれるような方に使っていただきたいし、お子さんやお孫さんに代々引き継いで使ってもらえたらうれしいですね。シンプルな中にもちょっと遊び心があり、使いやすいアイテムだから、長く使える飽きのこないデザインになっていると思います。 

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