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DIALOGUE

NAGAE TRADITIONAL DOLLS

デザイナーとのコラボレーションの中で、新しい技術や新たに取り入れた思考、視点の変化はありましたか? 

ひな人形しか作ったことがないので、全く違うものに技術を応用して形にするということが想像できませんでした。ひな人形づくりは応用が難しいという固定観念があり、当初は不安もありましたね。デザイナーさんの提案で一輪挿しを製作することに決定したのですが、最初は「ひな人形で海外にチャレンジしたい」という気持ちだったんです。海外の人向けに販売するものだから、敢えてひな人形っぽさを出さないものを作り、「実はひな人形を製作する技術で作ったものなんだ」と後で発見させるようなコンセプトがいいというデザイナーさんからの提案に「ひな人形とは全く違うもので、違う作り方で挑戦してみよう」と意識が変わりました。試行錯誤していく中で「なるほど!面白い」と思うことが何度かあり大変勉強になりましたね。このコラボレーションによって、ひな人形の技術の可能性が広がったと思います。 

実際にサンプルを作る中で驚きや、新しい発見はありましたか? 

洋服の生地と甲州印伝という異素材を組み合わせてみたことは発見でしたね。最初は「花瓶に着物を着せる」というイメージが強く、人形の形から脱却することができなかったんです。正面だけの重ねを作ってみたのですが「ひな人形っぽいから変えましょう」というデザイナーさんの意見で、裏も表も対照的に襟のように布を重ねることになりました。その発想はなかったですね。実際に試作してみると「これはいいぞ!やれる」という発見になりました。 

普段の人形づくりとの違い、難しさはどんなところでしょうか? 

普段使わない素材と形なので、試行錯誤しましたね。 

どうやって巻いていこうか?うまく巻くことができるか?どうやって整えてまとめ上げるのか?などと悩みました。人形づくりでは、作業に取り掛かる前にまず頭の中でイメージしてから始めるんですけど、今回はどうしてもイメージがわかなくて。素材も違う、作り方も違うので、裁断・縫製も含めて工夫が必要でした。 

普段使っている生地と異なることと作り方で戸惑われたのですね。 

はい。生地が違うので、糊の付け方も悩みました。具体的には、裁断縫製で重ねていくという作業なんですが、素材の厚みや素材の質感を確かめながらやってみて、力加減や巻き方を今までとは違う方法で試して、形にしていきました。 

重ねの技術を応用していると先ほどお伝えしましたが、重ねる精度の高さが出来栄えに響くんです。たくさん重ねれば重ねるほど作業も難しくなり、いつもと生地も違うので、均等に重ねるということが難しくmm単位で調整していきました。布のボリュームによって 広がりすぎたり寂しかったりするため、土台に合わせて調整しながら重ねていったのです。土台の寸法もゼロから考えたので、高さや幅など何回も木工職人さんに言って調整していただいて、一番いいバランスになったと思います。 

今回のプロダクトを作るのに、関わっている職人さんは何名ぐらいですか? 

フラワーベースの土台をお願いしている木工職人さん、一輪挿しの筒のところをお願いしている尾張七宝の職人さん、印伝職人さんと織物関係を含めて5~7人で製作しています。 

北川慎也さんは二代目とのことですが、今後の技術の伝承についてどんなビジョンを持っていますか? 

中学生の娘が小さい頃から「ひな人形屋さんになる」と言っているんですよ。ひな人形の技術の継承っていうのは家族間が多いんですよね。僕みたいなのはあまりないケースです。新しい人を入れて、広げて、技術をつなげていくっていうのは現実的には難しいんじゃないかな。日本の伝統文化のためにも、娘のためにも、ひな人形を作り続けていきたいですね。そのために、伝統的な技術を守りつつ、新しい時代に合ったものを作っていきたいと考えています。 

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