2021年に名古屋節句飾が伝統的工芸品として認められたことによる変化はありましたか?
はい。伝統的工芸品に指定されたことで、国家資格である「伝統工芸士」の試験の受験資格を得て、伝統工芸士となることができました。扶桑町で伝統工芸士は現在私だけですね。
新しいプロダクトを軌道に乗せるためにも「伝統工芸士」の肩書は大きそうですね。
そう思います。ひな人形の「作れば売れる」時代は終わりました。後継者問題もあり、受注も減り、廃業されている方も多いですね。だからこそ、ひな人形を作る職人の技術を応用して、国内外の方に一年中インテリアとして飾ってもらえるもの 、愛されるものを商品化していきたいと思っています。第二期のこのプロジェクトに参加している、雪洞づくりをする安藤商店さんとも新しい商品について相談しているところなんですよ。今回のプロジェクトをきっかけに、未来への可能性が広がったのを実感しています。技術を活かした商品をきっかけに、ひな人形の宣伝になればこれほどうれしいことはないですね。
それは、日本国内だけでなく海外にもひな人形をアピールしたいということですか?
ひな人形にアレンジを加えて、海外向けにアップグレードして販売に結びつけることができればいいなぁと思っています。今回のプロジェクトのノウハウを活かして、国内向けのひな人形も節句飾りとしてだけでなく、一年中飾れるインテリアとして開発したいと考えています。
この時代に手でものを作ることは、長江人形店さんにとってどんな意味がありますか?
ひな人形は機械化が難しいため、昔から問屋さん向けの量産品もほとんどが人海戦術の手作業でした。近年は少量多品種、世界にひとつだけという流れになってきましたが、弊社はひな人形をお客様の要望でセミオーダー、フルオーダーができる強みがあります。ひな人形の大きさや衣裳、屏風、花、前飾り、雪洞などの組み合わせは自由ですし、お顔もお選びいただけるので雰囲気も変わってきます。
縁あって気に入っていただき、自分の作ったひな人形で喜んでいただける方がいるというのは、本当にありがたいことです。それが職人としての誇りというか、機械による量産では味わえない喜びだと思っています。
長い時間と技術をかけて作られたものを、どういう方に使ってもらいたいと思いますか?
作っているだけでいい職人の時代は終わったと僕は思っています。お客様の要望をお聞きして、喜んでいただけるように作っていき、伝えていくのが私の役割です。
手に取っていただいた方が、ひな人形を飾るような気持ちで、心の豊かさを感じたり、インテリアとして長く愛用してくださったりしたらうれしいですね。